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2021.6.07

一般社団法人の設立は慎重に検討することが大切です。

 今回は一般社団法人の設立に関して解説いたします。10年以上前までは、非営利を目的として活動を行う団体が法人格を持つためのハードルは非常に高かったのですが、現在は法人格の取得と公益性の認定は分離されたため、容易に非営利を目的とする法人を設立することが可能になりました。ただし、一般社団法人として事業を行った方が良い事業と株式会社や合同会社で事業を行った方が良い事業がありますので注意が必要です。

一般社団法人とは?

 一般社団法人とは、非営利を目的として設立される法人です。ここで言う非営利とは利益を上げることが出来ないと言うことではなく、事業活動を通じて得た利益を社員(株式会社であれば株主に相当)に分配(配当)をすることが出来ないことを言います。つまり、非営利性(配当をしない)が確保されていれば多様な事業を行うことが出来ます。

一般社団法人の特徴

 一般社団法人の主な特徴は下記の通りです。

  • 設立時に社員が2名以上必要
  • 設立時の資金は不要
  • 許認可や監督省庁はない
  • 決算公告が掲示の方法によりできる
  • 一定の条件を満たせば税制優遇がある
  • 信用保証協会の利用ができない(医業やNPOは利用可能)

設立時に社員が2名以上必要

 株式会社の設立に関しては一人会社の設立が可能ですが、一般社団法人の場合には設立時社員が2名以上必要となります。ですので、一般社団法人を設立するためには自分以外に一般社団法人の社員になる者が一人必要となります。

設立時の資金は不要

 一般社団法人の設立に際して、株式会社のような資本金という概念がないため資金がゼロ円でも設立することが出来ます。ただし、設立に際しても費用が掛かりますし運営を行うためにも費用が掛かります。ですので、資金は不要でも実質的には社員が費用を負担したり基金等による資金調達を行ったりします。

許認可や監督省庁はない

 一般社団法人は公益法人やNPO法人と違い認証や認定が不要であり、所轄庁や監督省庁がないためそれらに対する報告義務はありません。

決算公告が掲示の方法によりできる

 決算公告に関しては、「主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法」による公告が可能です。費用負担がないためお手軽な公告方法になります。(株式会社は選択することができません)ただし、主たる事務所内で容易に閲覧できることが必要になりますので事務所がマンション等である場合には注意が必要です。

一定の条件を満たせば税制優遇がある

 次のいずれかの条件を満たせば、法人税法における収益事業に該当しない事業に関する所得は非課税となります。

非営利が徹底された法人

  1. 剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること

  2. 解散した時は、残余財産を国や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること

  3. 上記の定款の定めに違反する行為をしたことがないこと

  4. 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の1/3以下であること

共益活動を目的とする法人

  1. 会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること

  2. 定款等に会費の定めがあること

  3. 主たる事業として収益事業を行っていないこと

  4. 定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと

  5. 解散した時に、その残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めていないこと

  6. 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の1/3以下であること

  7. 上記に該当する期間中に、特定の個人又は団体に特別の利益を与えたことがないこと

信用保証協会の利用ができない(医業やNPOは利用可能)

 基本的には一般社団法人は非営利な法人であることから信用保証協会を利用した保証付融資を利用することが出来ません。(日本政策金融公庫の融資は利用できる。ただし、融資のハードルは高い)ですので、資金繰りは株式会社より苦労することが多いです。

まとめ

 今回は一般社団法人の設立に関して解説しました。一般社団法人は、非営利を目的した法人ですが基本的に様々な事業を行うことが可能となります。ですので、何となく一般社団法人の方が信用力がありそうであるとか、将来的に行政と連携することを考えているので一般社団法人を設立すると考えていらっしゃる方がいます。

 ただし、一般社団法人として寄附金収入や基金の目途が立っていなければ資金繰りで苦労することも考えられますので注意が必要です。個人的には複数の事業を展開することを予定している場合には一般社団法人で行うべき事業(寄附金収入がメインの事業)以外は、株式会社や合同会社を設立してそちらの方で運営していくことが望ましいと考えております。