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2021.9.6

小規模事業者の上手な節税手段~小規模企業共済~

 下関・北九州で税理士事務所を開業しております得丸です。今日は、小規模な事業者にとって有効な節税手段の一つである「小規模企業共済」を紹介します。

小規模企業共済とは?

 小規模企業共済とは、小規模な事業者(具体的には後記)が一定額を毎月積み立てを行うことにより、退職時や事業の廃止時に退職金を受けることが出来る制度です。また、主たる目的は退職金制度ではありますが、一定の事由に該当すれば分割で受け取ることができ有期年金と同じ効果を得ることや、事業資金の借入もできる制度となっております。(ただし、実際に借入れる場合は、金融機関で融資が下りない等の緊急時に限定したほうが良いです。)

小規模企業共済のメリット

 小規模企業共済には3つのメリットがあります。

メリット1:約1%~1.5%の運用利回りが期待できる

 まずは、なんといっても運用利回りの高さにあります。もちろん、ご自身で資産運用をされている経営者からすれば低いとお感じになるかもしれませんが、基本的に余剰資金を銀行に預けていることのみの経営者にとっては、魅力的な数字ではないでしょうか。

メリット2:掛け金が所得税法上の所得控除に該当するため節税が出来る

 事業所得を計算する際の必要経費になるわけではありませんが、所得控除(基礎控除、社会保険料控除、医療費控除などと同じ場所)に該当するため、年間の掛金の金額だけ所得が減少することとなり節税のメリットがあります。(ただし、解約する際には税金が発生する場合があります。詳しくは、デメリットの項目で解説します。)

メリット3:事業資金の借入れが可能

 仮に、事業資金が不足する事態が生じた場合には掛金の7割~9割(最大で2,000万円)を限度として年利1.5%(貸付の種類によっては、0.9%)で融資を受けることが可能です。

 ただし、金融機関からの融資が受けられる場合には金融機関からの融資を受けることをおすすめします。(仮に金融機関の方が利息が高い場合であったとしても金融機関と取引関係を結ぶことは事業を行っていく上で非常に重要です。)

小規模企業共済のデメリット

デメリット1:掛金納付年数が20年未満で任意解約した場合には、解約手当金が掛金合計額を下回る

 小規模企業共済は基本的には小規模な企業の退職金制度です。ですので、下記の事由の中で解約手当金支給事由に該当した場合に掛金納付月数が240ヶ月(20年)未満であれば解約手当金の額が掛金合計を下回ることになります。

<個人の場合>

共済金等の種類 請求事由
共済金A
  • 個人事業を廃止した場合
  • 共済契約者の方が亡くなられた場合
共済金B
  • 老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛金を払込んだ方)
準共済金
  • 個人事業を法人成りした結果、加入資格がなくなったため、解約をした場合
解約手当金
  • 任意解約
  • 機構解約(掛金を12か月以上滞納した場合)
  • 個人事業を法人成りした結果、加入資格はなくならなかったが、解約をした場合

より詳しくはこちらのページをご確認ください。

デメリット2:共済金や解約手当金を収受した場合には税金が発生する場合がある

 掛金を払込んでいる間はその金額が所得控除に該当しますが、共済金を一括で受け取る際には退職所得(解約手当金の場合には基本的には一時所得)又は分割で受け取る場合には雑所得(公的年金)として課税される可能性があります。退職所得は課税上優遇されていますし雑所得(公的年金)であれば公的年金控除の適用がありますので、仮に退職所得や雑所得(公的年金)として課税されたとしても、通常は掛金を払込んでいた際の節税効果の方が大きいです。

デメリット3:企業規模による制限がある

 あくまで、小規模な事業を営んでいる個人又は法人に向けての制度ですので、一定の規模の事業を営んでいる場合には加入そのものができません。具体的な加入資格は下記の通りです。

  1. 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
  2. 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
  3. 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
  4. 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
  5. 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
  6. 上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

毎月の掛金額

 掛金月額は、1,000円から7万円まで拠出することができます。ですので、原則として年間84万円の所得控除が可能ですが、前納拠出と合わせると年間168万円の所得を減額することが可能です。ただし、その年に168万円の納付を行うと翌年は前納が出来なくなってしまう(納付は口座振替ですので、翌年に口座振替ができるタイミングがないと前納できません。)ので注意が必要です。ですので、仮に168万円納付できるとしても、基本的には161万円(今年度+次年度の1月~11月分)を選ばれることをおすすめします。

加入手続き

 加入手続きについては、必要書類をご準備の上、中小機構が委託している団体又は金融機関の窓口に提出することが必要になります。詳しい加入手続きの流れに関してはこちらをご確認ください。

※節税目的で事業年度終了間際に駆け込みで加入する際は注意が必要です。所得控除を受けるためには実際に納付までが完了する必要がありますので、手続きの不備で加入が事業年度をまたいだり、初回の納付を口座振替にすることにより実際の納付が事業年度をまたいだりする場合にはその事業年度において所得控除が出来ません。

まとめ

 今回は、小規模な事業者が事業が軌道に乗った際にまず検討すべき節税手段である小規模企業共済に関して解説いたしましたが、基本的には加入することをおすすめします。ただし、妥当な掛金の額であったり前納拠出をする必要があるか等に関しては、税金のシミレーションをした方が良いこともありますので、専門家に相談をしてからの加入をよりおすすめします。