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2021.9.9

中小企業者の上手な節税手段~経営セーフティ共済(倒産防止共済)~

 下関・北九州で税理士事務所を開業しております税理士の得丸です。今日は、中小企業者にとって有効な節税手段の一つである経営セーフティ共済(倒産防止共済)を紹介します。

経営セーフティ共済(倒産防止共済)とは?

 経営セーフティ共済(倒産防止共済)とは、取引先が倒産した場合に連鎖倒産を防止するための制度です。ですので、仮に取引先に倒産等の事由が生じた場合に必要となる事業資金(限度あり)を速やかに借入れることができます。

加入のメリット

メリット1:取引先が倒産した場合に事業資金の借入れができる

 取引先が倒産した場合には、無担保・無保証・無利息で掛金の10倍(8,000万円限度)まで借入が可能です。ただし、無利息の部分に関してはちょっとしたカラクリがございますので、その点に関してはデメリットの項目にて解説いたします。

メリット2:掛金が全額経費となるため課税の繰延になる

 掛金(月額5,000円~20万円)が全額経費となるため、所得(利益)が生じていれば、掛金相当額の所得(利益)が減少することとなり課税の繰延が出来る。(掛金を支払った年度は税金が安くなりますが、返戻金受取時には課税されるため基本的には節税ではなく課税の繰延です。)

 掛金が経費となるため、国民健康保険も減少しますのでこの点もメリットです。

メリット3:一時貸付として、取引先が倒産していない場合にも借入が可能

 取引先に倒産等の事由が生じていない場合であっても、年利0.9%で最大掛金総額の95%相当額を借り入れることが出来ます。(あくまで最大ですので、掛金の納付月数によって異なります。詳しくはこちら

メリット4:個人事業主から法人成りした場合でも経営セーフティ共済を引き継げる

 個人事業主から法人成りした場合であっても、期限内に所定の手続きを履めば引き継ぐことが可能です。ただし、法人から個人事業主へ既に支払った掛金相当額を支払う必要がありますので、その際に個人に所得があれば課税されます。

加入のデメリット

デメリット1:取引先が倒産し事業資金の借入れを行った場合に掛金の一部が消滅

 取引先が倒産した場合に事業資金の借入れを行うとその借入を行った額の10%相当額の掛金が消滅することになります。具体的には、仮に8,000万円を返済期間7年(据え置き期間6ヶ月含む)で借入れた場合、8,000万円の10%である800万円の掛金が消滅することになります。

 つまり、どういうことかと言いますと実質的には無利息ではなく8,000万円の融資を受けるために、7年間で利息を800万円支払っていることと同じです。(ちなみに元金均等払いで、年利で言えば約2.6%ぐらいです。)

デメリット2:掛金を40ヶ月以上納めていない場合には、解約時に元本が割れる

 掛金の納付月数が40ヶ月未満で解約する場合にはその解約返戻金が元本を割れることとなります。ただし、経営セーフティ共済(倒産防止共済)はあくまで納付月を重視(掛金の額ではなく)しますので例えば、当初毎月20万円掛金を支払っており、35ヶ月目から毎月1万円に減額したとしても、納付月が40ヶ月以上となれば元本割れが生じないこととなります。

デメリット3:解約時に課税される

 経営セーフティ共済(倒産防止共済)は基本的には節税ではなく課税の繰延の制度ですので、解約返戻金受取時には個人であれば所得税、法人であれば法人税が課税されることとなります。(解約返戻金を受け取った事業年度において所得又は利益が発生している場合)

加入条件

 継続して1年以上事業を行っている中小企業者で下記の表の「資本金」又は「従業員」の基準のいずれかを満たす場合に加入することが出来ます。

業種 資本金の額または出資の総額 常時使用する従業員数
製造業、建設業、運輸業その他の業種 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く。) 3億円以下 900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

毎月の掛金額

 5千円単位で最大一月20万円(掛金総額は800万円が限度)まで拠出することができます。ですので、原則として年間240万円が経費となります。また、前納拠出と合わせると年間480万円の経費にすることが可能です。ただし、その事業年度に480万円の納付を行うと翌事業年度は前納が出来なくなってしまう(納付は口座振替ですので、翌年に口座振替ができるタイミングがないと前納できません。)ので注意が必要です。ですので、仮に480万円納付できるとしても、基本的には460万円(仮に3月末決算とすると、当事業年度+翌事業年度の4月~2月分)を選ばれることをおすすめします。

加入手続き

 加入手続きについては、必要書類をご準備の上、中小機構が委託している団体又は金融機関の窓口に提出することが必要になります。詳しい加入手続きの流れに関してはこちらをご確認ください。

※節税目的で事業年度終了間際に駆け込みで加入する際は注意が必要です。経費に算入するためには実際に納付までが完了する必要がありますので、手続きの不備で加入が事業年度をまたいだり、口座振替による納付が事業年度をまたいだりする場合にはその事業年度において経費に出来ません。

まとめ

 今回は、経営セーフティ共済(倒産防止共済)に関して解説いたしましたが、特に仕入コストが高いビジネスモデルの場合には、取引先が倒産したとしても仕入先には代金を支払う必要があるため、共済の本来の主旨である連鎖倒産を防ぐためにも加入を検討された方が良いです。

 また、そうでないビジネスモデルであっても一定の課税の繰延の効果がありますので検討してみる価値はあると思います。(ただし、掛金総額は800万円が限度ですのでその点を踏まえて専門家と一緒に考えることをおすすめします。)