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2021.9.16

所得税の青色申告(65万円控除)・青色申告(55万円控除)・青色申告(10万円控除)・白色申告の違い

 下関・北九州で税理士事務所を開業しております税理士の得丸です。今日は、所得税の青色申告(65万円控除)・青色申告(55万円控除)・青色申告(10万円控除)・白色申告の違いを解説いたします。

そもそも青色申告とは?

 所得税は納税者が自ら税法に従った所得金額と税額を計算し納税すると言う申告納税制度を採用しております。そして、適正な所得金額と税額の計算に関しては一定水準の記帳が必要となります。そのため、一定水準の記帳をしその記帳に基づいて適正な申告書を作成する者に関しては所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる制度です。

青色申告書の特典

主な特典は下記の通りです。

  • 青色申告特別控除
  • 青色事業専従者給与
  • 貸倒引当金
  • 純損失の繰越しと繰戻し

青色申告者が備え付けておく帳簿書類

 青色申告は、適正な所得金額と税額を計算するために一定水準の記帳レベルが担保されている必要があります。ですので、年末に貸借対照表と損益計算書が正しく作成できるように現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳(経費の区分ごとに)・固定資産台帳のような帳簿を備え付けておく必要があります。

青色申告特別控除(65万円控除)

 青色申告の承認を受けた個人事業主で下記の要件を満たす者はその所得の金額から65万円を限度として控除できる。

  1. 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
  2. 所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
  3. 2の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。
  4. その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること。又は、その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

青色申告特別控除(55万円控除)

 青色申告の承認を受けた個人事業主で下記の要件を満たす者はその所得の金額から55万円を限度として控除できる。

  1. 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
  2. 所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
  3. 2の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。

※65万円控除との違いは電子申告と電子帳簿保存のいずれも行っていない場合には55万円控除となります。

青色申告特別控除(10万円控除)

 青色申告の承認を受けた個人事業主で65万円控除と55万円控除の規定のいずれも適用されない者で事業所得、不動産所得又は山林所得がある場合にその所得の金額から10万円を限度として控除できる。

白色申告

 白色申告とは、青色申告の承認を受けていない個人事業主の申告方法のことです。白色申告に関して現在は白色申告であっても帳簿書類の作成は義務付けられており、また原則として現金主義は認められません。ですので、会計方法はほぼ青色申告(10万控除)の方と同じです。一応メリットとしては、記帳に関してはシンプルな記帳が認められていることです。

各申告区分(青色(65万)・青色(10万)・白色)と帳簿書類

 青色申告特別控除を受けるためには、一定の帳簿書類の作成が要求されます。そして、各申告区分ごとに作成が求められる帳簿書類が異なります。

帳簿 主要簿 仕訳帳
総勘定元帳
補助簿 補助記入帳 現金出納帳
当座預金出納帳
小口現金出納帳
仕入帳
売上帳
補助元帳 買掛金元帳
売掛金元帳
商品有高帳
得意先元帳
仕入先元帳
固定資産台帳

※補助記入帳と補助元帳の違いは、補助記入帳は特定の取引の詳細を取引の発生順に記録する補助簿であり、補助元帳は特定の勘定科目の内訳を記録する補助簿です。

 上記の中で、青色申告特別控除として65万円又は55万円の控除を受けようとする場合には、主要簿である仕訳帳と総勘定元帳は必ず作成する必要があります。さらに、必要に応じて各補助簿を作成する必要があります。

 青色申告特別控除として10万円の控除を受ける場合には、補助簿(現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳等)を備え付けて簡易な記帳でも良いこととなっております。この簡易な記帳を行っている場合には、青色申告決算書のうち貸借対照表の作成は不要となっております。

 白色申告であっても、原則として発生主義会計が求められますので現金出納帳だけでなく掛取引があれば、売掛帳や買掛帳等の補助簿の作成が必要となります。

各申告区分のポイント

 各申告区分の違いを表にまとめると下記のようになります。

区分 帳簿作成 特別控除 電子申告or電子帳簿保存 事前申請 決算書の記載
青色申告(65万控除) 難しい 65万円 必要 必要 多い
青色申告(55万控除) 難しい 55万円 不要 必要 多い
青色申告(10万控除) やや難しい 10万円 不要 必要 一部省略可能
白色申告 簡単 なし 不要 不要 少ない

 ただし、帳簿の作成に関しては会計ソフトを使用することでその負担が大幅に軽減されます。また、個人的にはこれから事業を始められご自身で申告をやられる場合に、白色申告以外の方は会計ソフトを導入することを強くおすすめします。なぜかと言うと経営者として、手書きで帳簿体系を理解できるようになってもメリットはありません。経営者として計数管理に強くなるメリットは大きいですが、残念ながら手書きで帳簿を作成しても計数管理能力は向上しません。

まとめ

 本日は、青色申告と白色申告の違いに関して解説いたしましたが、青色申告は適正な税務申告を行うための体制がしっかりしている事業主に与えられる特典であるため、帳簿書類の作成等めんどくさく感じるかもしれませんが、今は会計ソフトが充実しておりますので、ほぼ会計ソフトで完結できます。(棚卸の管理や固定資産の管理は別で必要)ですので、会計処理がめんどくさい場合には専門家に依頼するか会計ソフトを導入して記帳することをおすすめします。