税理士の選び方

 文章が長いですので、気になったところからチェックいただければ幸いです。ただし、もっとも大事なことだけはぜひご一読いただきたいです。

そもそも税理士事務所とはどんなとこ?

 税理士事務所を選ぶ際にはそもそも税理士事務所はどんな業務を行っていてどんな人が働いているかを知る必要があります。ですので、簡単に税理士事務所の業務内容・そこで働く人に関してお伝えします。

業務内容

 まず、税理士事務所の基本的な業務としてご存じの方も多いと思いますが、記帳代行・決算・税務申告・その他付随業務(年末調整・償却資産税関係・各種届出)があります。 これらの業務は基本的にどの税理士事務所も行っています。ただし、月次決算の実施や訪問頻度にはバラツキがあります。さらに、事務所によっては、経営支援・融資支援・開業支援・特定の業種に特化した支援などを行っていることがあります。

働く人

 そして、税理士事務所で働く人ですが実は税理士事務所に勤務している方の多くは税理士ではありません。(従業員の税理士割合が50%以上の税理士事務所もありますが、そうでない場合が多いです。)

 例えば、病院で診察してくれるお医者さんが無資格の方であることは絶対にないですよね。しかし、税理士事務所では顧問契約をすると税理士ではない方が担当されることも多くあります。これはもちろん違法ではなく、税理士が責任をもって管理監督している限り認められています。

 私も無資格の状態で税理士事務所に勤務した経験がありますし、それ自体が悪いとはまったく思いません。また、税理士であるか否かと仕事のできるできないは必ずしもリンクするものではないと考えております。 ただし、まだ無資格の状態である者はプライベートな時間等の自由な時間のほとんどは税理士の資格を取得するための勉強に費やさなければなりません。

 そして、お客様が望まれるサービスは税務に限定されないことも多く、経営支援・融資支援・ITに関すること等、お客様によりご満足頂くためにはプライベートな時間をその勉強にあてる必要があります。

 そういった場合に既に税理士である者は実際に勉強するかどうかは別としてお客様のために使うプライベートな時間があります。 ですので、経営支援や高度な支援を望まれる場合には、税理士が担当してくれることが望ましいと考えられます。(また、創業予定の方、創業1年未満の方などは自身の経営スタイルが確立するまでは、税理士が担当してくれることが望ましいでしょう。)

税理士事務所と一般の事業会社との違い

 税理士事務所と一般の事業会社の違いとしては、税理士事務所はどちらかというと離職率が高いです。その理由として一つは、税理士事務所の業務と一般の事業会社の経理職の業務は親和性があり、基本的な待遇は一般の事業会社の経理職の方がいい傾向にあります。ですので、税理士を目指すことをやめた方は一般の経理職に転職する場合があります。

 もう一つは、税理士は独立が容易な資格ですので優秀で事務所から厚遇されている従業員であっても退職することがよくあります。そのため、業務を担当する者が税理士であるか否か又は優秀であるか否かに関わらず数年ごとに代わることがよくあります。

税理士事務所のタイプ

税理士事務所を選ぶ際には、まず大まかな税理士事務所のタイプを知っておく必要があります。

主な税理士事務所のタイプは次の通りです。

  • 一般の税理士事務所
  • 格安の税理士事務所
  • 専門特化型の税理士事務所(業種)
  • 専門特化型の税理士事務所(業務)

それぞれ、特徴やメリット、デメリットがありますので下記に記載いたします。

一般の税理士事務所

特徴

 まずはもっともオーソドックスなタイプの税理士事務所です。一番事務所のタイプとして多いのもこのタイプです。

メリット

 基本的には、すべての業種・税目(法人、個人、相続等)に対応しているため対応できる業務の幅が広いです。また、従業員を雇用する際も業務の幅が広いため将来独立を目指すなどの優秀な人材を獲得できる可能性が高いです。

デメリット

 いい税理士事務所に出会えるとあらゆる税務のサポートを行ってくれるので非常に心強いですが、事務所のタイプも多くそのサービスの質についてはそれぞれの事務所ごとで大きく異なります。 そのため、すべてのタイプの税理士事務所に該当することではあるのですが契約の際にはより注意して、望むサービスを提供してくれるかどうかを判断しなくてはなりません。(複数の税理士事務所で見積もりを取ることをおすすめします。)

格安税理士事務所

特徴

 月間の顧問料を非常に安く設定してサービスを提供してくれます。ただし、最低限の業務のみ行うことが多いです。

メリット

 顧問料の安さが最大のメリットです。

デメリット

 税理士と直接会うことが年に一度であったり、連絡手段がメールやチャットに限定されている場合もあります。また、税務申告・その他付随業務以外の業務に関して別途追加料金を請求されることもあります。

 ですので安い料金でどこまでの業務をカーバーしてくれるのか業務範囲の確認は必須です。(なお、契約時に経営者が認識していない業務も存在する可能性があるので、まず、通常必要となる経営者がすべき税務・会計に関する年間のスケジュールの提示を受けてから業務範囲を確認されると良いでしょう。)

専門特化型事務所(業種)

特徴

 特定の業種に特化した税理士事務所です。特徴としては、飲食・介護・病院・宗教法人等の特定の業種に特化しています。特に医療法人や宗教法人等に関しましては、税務上やその他の関連法規において特殊性がありますので業種に特化した税理士事務所を検討に入れることをおすすめします。

メリット

 業種に特化した事務所に関しまして同一の業種の顧問先を多く抱えているためその業種に関しての深い専門知識があります。

デメリット

 業種に特化した事務所(飲食・介護・病院・宗教法人等)の場合には、業種が同一であるため同業他社の経営に関するコアな情報を教えてもらい自社の参考にしようとする経営者がいらっしゃいますが、具体的な情報は守秘義務の観点から共有することができず抽象的になってしまうため注意が必要です。

 また、一概には言えないですが業種に特化した事務所の場合に一番メリットを受けるのは事務所の経営者であることがあります。

 理由としては、クライアントが受けるデメリットは前述のとおりですし、従業員が受けるデメリットは業種が限定されてしまうため経験できる業務が偏ってしまいます。一方税理士事務所の経営者は業種に特化しているため営業しやすいですし、法改正や関連法規に関してはその業種に関する部分を中心にアップデートすれば良いので通常の事務所に比べて楽です。

 ですので、業種に特化した事務所は特定の業種向けの広告宣伝に力を入れているケースもあり外見は良いですが、業務が限定されるため採用には苦労することもあり、中身が...の場合もあります。面談時に従業員の教育体制に関しても詳しく聞くと良いでしょう。ここで納得する答えが返ってくるといい事務所の可能性が高いです。

専門特化型事務所(業務)

特徴

 特定の業務に特化した税理士事務所です。特徴としては、経営支援・融資支援・新規開業等に特化した事務所があります。

メリット

 業務に特化した事務所(経営支援・融資支援・新規開業等)に関しまして、会計・税務に限定されないその分野の専門的なサービスの提供が期待できます。

デメリット

 業務に特化している事務所(経営支援・融資支援・新規開業等)の場合には、顧問料は少し高めに設定されている傾向があります。また、経営支援などのサービスの提供には日々の勉強も欠かせないため従業員に占める税理士の割合が低い事務所では実際に満足のいくサービスが提供できない可能性があります。

 また、こちらも一概に言えないですが、経営支援を希望される場合に面談時に棚卸の実施状況について質問がなければ注意したほうが良いです。

 どういうことかと言いますと、棚卸の実施が年一回(決算期)のみの実施では月次決算の数字は正確な数字とは言えず、適正なサービスを提供することが困難であるため棚卸から改善することはよくあります。ただし、この月次棚卸体制の構築はかなり手間がかかることや簡素化するためにシステム導入を提案するなど、時間もお金もかかる場合があるため事前に説明します。

 このような説明がなく、棚卸も年一回のまま放置しているような事務所だと、不正確な月次決算書にいくつかのグラフをつけただけのほぼ無意味なサービスが提供されてしまいますので注意が必要です。

共通してもっとも大事なこと

もっとも大事なこと

 非常に簡単にではありますが、各タイプの事務所の特徴を記載しました。そして、もっとも重要なことは当たり前のことですが、実際に会ってみることです。

 ただし、ここで重要なのは誰に会うかです。誰だと思いますか?そう事務所の所長!!ではなく、実際にあなたを担当する方に会う必要があります。

 これは、税理士事務所の提供するサービスの質の多くはその担当者に依拠します。なぜなら、直接やり取りをするのはその担当者であり事務所の所長あるいは上司は常に経営者の意向や考え方をその担当者を通じて知ることになるからです。

 例えば、顧問先の経営者から節税がしたいと依頼を受けた際、経営者の真意は節税をして会社にお金を多く残したいである場合に、単に節税という言葉だけを所長に伝えると節税にはなるが一次的に会社から多くのお金が流出してしまう節税(課税の繰延)対策を提案されるということがおこります。言うまでもないと思いますが、優秀な所長のもとに必ず優秀な従業員が集まるとは限りません。

 また、税理士は独立の選択肢もあり、優秀で事務所の評価が高い従業員でも辞めることはよくあります。そのため、税理士事務所を選ぶ際は必ず担当者(担当予定の者)に会いましょう。

担当者に会う前にできればやっておきたいこと

 どちらかというと経営に関することですが、新規に開業した場合や開業まもない会社では、事業を始めるための準備は行っていますが、事業を継続させるための準備が不十分な場合があります。

 どういうことかと言いますと、例えば飲食業を新規に開業するとした場合に、立地はどこにするか・どのような料理を提供するか・食材はどこから仕入れるか・価格はいくらにするか・店舗の設備はどうするか・従業員を雇用するか等に関しては時間をかけて準備していると思います。 そして、これらの準備が整った後に融資のこと、会計のこと、税金のことなどを考えることになるかと思います。これらは、そもそも事業を始めるために絶対に必要なことであったり、法律上必要なことですのである程度は準備されています。

 しかし、事業を継続させるためには店舗があって営業をすることにプラスして、事業が停滞している時にどうするか、事業が好転している時に次の展開をどうするか、について事前にどのような情報を重視して決断し行動するのか、そもそもその情報は誰が集めるのか、というような事業の継続のための準備が大切になります。

 ですので、担当者に会う前にこの事業の継続に必要な情報について、どの程度のレベルの物を税理士事務所に提供してほしいのかを明確にできると良いでしょう。(事業の継続に必要な情報のレベルといってもよくわからないですよね。少し補足しますので下記をご確認ください。)

事業継続のために必要な情報のレベル

 例えば、売上が下がっている飲食店舗について税理士事務所の担当者からのアドバイスがあった場合に「売上が下がってきているので何か対策をされた方がいいですよ」というA事務所と、「売上が下がってきていますが、当事務所で検討したところ○○という料理は人気があります、ただしこの料理はどちらかというと原価率が高くあまり利益が出ていません。ですので、まずこの料理に類似した原価率を抑えたメニューを開発し、その売上を注視し現状のお客様にご満足頂けるようでしたら、その商品を目玉商品として広告を出す等の拡販に力を入れたらどうでしょうか。」と提案してくれるB事務所、経営者としてはどちらの事務所がありがたいですか?

 A事務所は、売上が下がっている事実を伝えているのみなので、その後にどういった手を打つかは経営者がすべて考えなければいけません。一方B事務所は、売上が低下している現状の中でも売れている料理がある事実、ただし、原価率が高くあまり利益が出ていないので改善が必要ではないか等個別具体的に数字の根拠を示しながらアドバイスをくれています。

 もし、「顧問料を払ってるんだからほとんどの税理士事務所はB事務所のような対応をしてくれるんでしょう」と思われていると注意が必要です。実はほとんどの事務所はA事務所のような対応をされます。

 ただし、けっしてA事務所のような事務所が手を抜いているわけではないのです。通常の税理士事務所では、決算や税務申告に必要な数字の情報や、関連する取引の情報等に関しては共有を頂いて管理しています。そして、この決算・税務申告に必要な情報と経営に役立つ情報は必ずしも一致しません。(特に経営に役立つ情報のうち行動につながる情報は決算・税務申告に必要な情報のみでは得られないことが多いです。)

 決算・税務申告に必要な情報は主にその期間(事業年度)の売上・原価・経費・利益です。一方経営に役立つ情報は売上・原価・経費・利益の個別具体的な情報(商品ごとの売上、商品ごとの原価、来客数、ランチ・ディナーごとの利益、時間あたりの利益等)です。ですので、決算・税務申告のついでに経営に役立つ情報(特に行動につながる情報)の提供は通常できません。(この点に関しては、実際に経営を行なっていく中で初めて気づく経営者が多いです。)

 そのため、経営に役立つ(行動につながる)個別具体的な情報が必要な場合には、事業継続のために必要な情報の提供レベルが高い税理士事務所を選ぶ必要があります。

参考までに次のことを誰がやるかを明確にした状態で、担当者とお会いになるとより良いでしょう。

  • 毎月の経営成績の把握
  • 経営者 or 税理士 or その他(全体の経営成績は、税理士事務所に月次決算を依頼していれば毎月提供されます。ただし、行動につながる細かい情報は提供されないことが多いので注意が必要です。)

  • 現状の改善すべき事項の把握、事業の強みの把握
  • 経営者 or 税理士 or その他(通常の税理士事務所のサービスでは、提供を受けられない可能性が高いので自身でやるか、税理士事務所にお願いするか、その他のコンサルタントに依頼するかを決める必要があります。)

  • 融資に関する情報
  • 経営者 or 税理士 or その他(最終的な判断はもちろん経営者が行いますが、融資に関する情報をどの程度の頻度で提供してもらうか。毎月・四半期・決算ごとなど)

まとめ

ポイント1

 税理士事務所にはいくつかのタイプがあり、大きく分けると一般の税理士事務所・格安税理士事務所・専門特化型の税理士事務所があります。タイプ別に異なるメリット、デメリットがありますので整理しましょう。

ポイント2

 税理士事務所のサービスの質は担当者による影響が大きいので、顧問契約する前に必ず担当者(担当になる予定の者)に会いましょう。

ポイント3

 担当者に会う前に、事業を継続するための情報をどの程度のレベルで提供してほしいのかを明確にしましょう。(税理士事務所から提供を受けた時点で決断して行動できるレベルで提供を受けたいのか。それとも、最小限の情報でそこから自身が情報の整理、深堀を行うのか。)

最後にちょっとだけ当事務所のこと

 当事務所は上記の税理士事務所タイプの中で言いますとピタッと当てはまるものはないですが、「料金は安価で経営支援に力を入れている税理士事務所」です。

 詳しいサービス内容等はこちらをチェックしていただきたいのですが、当事務所が経営支援に力を入れている理由は、 正しい経営を行っていくためにはその業務に関する経験・知識・それらに基づく直感、自社の数字に関する情報(会計や税務に必要な情報に限定されないより広い意味での数字)が必要であると考えております。

 そして、この数字に関する情報は一般的な税理士事務所が提供する記帳代行・決算・税務申告では十分に満たされないと考えていることからそれらにプラスして経営支援サービスを行っていく必要があると感じているためです。