融資の部屋

2021.5.24

中小企業経営力強化資金とは?

 今回は、中小企業経営力強化資金に関して解説いたします。

中小企業経営力強化資金

 中小企業経営力強化資金とは、日本政策金融公庫が実施している融資制度の一つです。少し前までは、創業期の融資制度として日本政策金融公庫の新創業融資制度と同じく人気の融資制度でした。(現在は、メリットが減少したため創業期にはあまり利用されなくなりました。)

制度の概要

対象者 次の1または2に該当する方
1.次のすべてに該当する方
  • 経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む)を行おうとする方
  • 自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方
2.次のすべてに該当する方
  • 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である方
  • 事業計画書を策定する方
資金使途 事業計画の実施のために必要とする設備資金および運転資金
融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内)
運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内)
担保・保証人 要相談(ただし、基本的に1,000万円以下であれば無担保・無保証で融資が可能)

メリット

 一番のメリットは1,000万円までは、無担保・無保証で融資を受けることが出来ます。(少し前までは2,000万円まででした)さらに、自己資金の要件も不要であるため自己資金がゼロでも融資を受けることが可能です。(あくまで、制度上はゼロでも融資が実行される可能性が一応あるという程度に考えた方が良いです)

デメリット

  • 事業計画の策定が必要
  • 認定支援機関のサポートが必要
  • 2年間は公庫へ報告義務がある
  • 認定支援機関に対する手数料が発生する場合がある
  • 繰上げ返済できない
  • フランチャイズは利用できない

 この中で最大のデメリットは、認定支援機関の支援が必要であるということです。認定支援機関とは、中小企業・小規模事業者が安心して経営相談等を受けるために、専門知識や実務経験が一定レベル以上の個人や団体であると国から認定を受けた機関のことです。

 税理士事務所が認定支援機関となっていることも多く、顧問料に事業計画書の策定費用等が含まれている場合もありますが、基本的には、事業計画策定報酬、融資実行に係る成果報酬、報告手数料等のコストが発生します。

 また、制度の趣旨からフランチャイズに関しては中小企業経営力強化資金を利用できません。

新創業融資制度との違い

 中小企業経営力強化資金と同じく新創業融資制度は無担保・無保証で3,000万円まで融資を受けることが出来ますが、支店決済枠が1,000万円までであるため実質的には無担保・無保証で融資を受けることが出来る金額は中小企業経営力強化資金と同じく1,000万円までと考えた方が良いでしょう。

 また、新創業融資制度に関しては創業資金総額の10分の1の自己資金が必要ですが、中小企業経営力強化資金には自己資金の要件がありません。

 少し前までは、中小企業経営力強化資金で無担保・無保証での融資限度額が2,000万円まででしたので創業時に1,000万円を超える融資を希望する場合には中小企業経営力強化資金も有効な選択肢の一つでした。

 しかし、現在は1,000万円が限度であるため、創業時は事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象となる新創業融資制度が選ばれており、その後の無担保・無保証の融資として中小企業経営力強化資金が検討されています。

まとめ

 今回は、中小企業経営力強化資金に関して解説しました。少し前までは、無担保・無保証での融資限度額や利率の低さから創業時にも魅力的な融資制度の一つでしたが現在はその魅力が半減しました。ただし、無担保・無保証の融資制度は多くないため事業を拡大するための融資制度としては心強い融資制度の一つです。