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2021.9.11

個人事業主・中小企業者の上手な節税手段~まとめ~

 下関・北九州で税理士事務所を開業しております税理士の得丸です。今日は、これまで紹介した個人事業主・中小企業者にとって有効な節税手段を比較検討して、あくまで私の個人的な意見で優先順位を決めたいと思います。

 ちなみに、これまで紹介した節税手段の記事は次の通りです。

 実は今回比較するものの中で上記の記事では取り扱っていないものがありますので、最初にその説明から行います。

付加年金

 付加年金とは個人事業主(厳密には国民年金第1号被保険者及び任意加入被保険者が対象)が年金の上乗せをするための制度です。月額400円の付加保険料の負担で年金支給額がアップします。具体的な上乗せ額は下記の通りです。

200円×納付月数(最大480ヶ月)=年間最大96,000円となります。つまり、20歳から60歳まで付加保険料を40年(480ヶ月)収めた場合の保険料負担総額が192,000円で毎年受給できる年金の増加額が96,000円ですので2年で元がとれる制度となっております。(ただし、国民年金基金との併用が出来ないことは注意が必要です。iDeCoの場合には掛金限度額が1,000円減少しますが併用はできます。)

各制度のまとめ

 各制度の概要を下記の表にまとめてみました。

区分 本来の主旨 対象者 掛金支払い時の税金 共済金等受取時の課税 貸付制度の有無
小規模企業共済 事業主の退職金制度 小規模事業者(個人・法人) 所得控除(最大月額7万円) 一括で受取る場合:退職所得又は一時所得

分割で受け取る場合:雑所得(公的年金)
あり
倒産防止共済 連鎖倒産の防止 中小企業者(個人・法人) 経費になる(最大月額20万円)掛金総額800万円限度 解約返戻金:事業所得 あり
国民年金基金 将来の年金の積み立て(原則終身年金) 個人事業主 所得控除(iDeCoと合わせて最大月額6.8万円) 雑所得(公的年金) なし
iDeCo 将来の年金の積み立て(有期年金) 個人事業主・法人の役員又は従業員(ただし、掛金の限度額は個人事業主より少ない) 所得控除(国民年金基金と合わせて最大月額6.8万円) 一括で受取る場合:退職所得又は一時所得

分割で受け取る場合:雑所得(公的年金)
なし
付加年金 将来の年金の積み立て(終身年金) 個人事業主 所得控除(月額400円) 雑所得(公的年金) なし

 ん~なんだか、難しいですね。

私が選ぶ優先順位

 結論を言えば、どの制度を選ぶかは業種や個々の置かれている状況によって異なります。ですので、今回はあくまで税理士事務所の経営者としての私の優先順位とその理由を述べます。

第1位:小規模企業共済

 まずは、小規模企業共済を選びます。理由としては、小規模企業共済の現時点での年間の運用利回りは最大で約1.5%ですので、節税効果にプラスして実際に掛金から現金が増加するのも魅力的です。さらに、事業資金の借入もできます。ただし、掛金の納付月数が一定期間を下回りかつ一定の解約事由に該当すると元本割れが起こってしましますが税理士事務所は比較的利益が安定する業種ですので第1位にしました。

第2位:国民年金基金

 私は、個人事業主ですので会社勤めの方と違い厚生年金部分がありません。ですので、国民年金基金の加入によって将来貰える年金のアップと節税効果を考慮して第2位としました。国民年金基金は解約返戻金がありませんし、年金ですので、寿命によっては元が取れないリスクもあります。加入する年齢によりますが、男性であれば平均寿命まで生きてトントンぐらいだと思います。(私の父方の祖父は100歳ですし、母方の祖父も94歳です。ですので、長生きすることを見込んでこの順位です!!)

第3位:倒産防止共済

 倒産防止共済は、取引先が倒産した場合に迅速に掛金の10倍までの借入が可能なため非常に心強い制度ではあります。ただし、税理士事務所は取引先の倒産による貸倒リスクが高くないこと、及び掛金総額が800万円と限度があることなどからこの順位としました。ですので、連鎖倒産のリスクが高いビジネスモデルの場合には重要性が増し順位が上がることでしょう。

第4位:付加年金

 付加年金は、国民年金基金に加入している場合には加入できませんのでこの順位です。

第5位:iDeCo

 iDeCoも国民年金基金を限度額まで掛けると加入できないのでこの順位としました。

補足

 仮に私の寿命が75歳だと仮定した場合には第1位は付加年金で第2位が小規模企業共済、第3位にiDeCoを選択しますね。そして、第4位に倒産防止共済ですかね、平均寿命以下であれば、国民年金基金では元が取れない可能性が高いのでiDeCoで一時金(退職所得)として受け取ります。ここで注意が必要なのは、小規模企業共済とiDeCo双方を一時金でもらう場合には、どちらをどのタイミングでもらうかによって税金の負担が異なります。結論のみ記載すれば、初めにiDecoの一時金を受け取り、受け取ってから5年経過後に小規模企業共済の共済金を受け取る方がお得です。

まとめ

 今回は、これまで紹介した節税手段の簡単なまとめを行いました。正直上手な節税手段は個々のビジネスの内容や経営者の考え方によって異なります。ですので、ここでは節税手段がいくつかあり、各制度のメリット・デメリットをしっかり理解する必要があると言うことをご理解いただければOKです。そして、可能であれば専門家と共に経営者が考えるビジネスモデルの実現にもっとも有効な制度を選択できると良いです。また、実はまだまだ節税に関する手段がございますので、今後も記事にしていきたいと思います。